と考えられており、また生物時計の調節や睡眠誘発作用があることから注目さ
メラトニン受容体の細胞内情報伝達系について明らかにする第一歩として,各種グアニンヌクレオチド類とカチオンを用いてG蛋白質と連関しているかどうか調べた。各種ヌクレオチド類はキンギョ脳内メラトニン受容体の特異的結合を用量依存的に減少させた。その効果はguanosine 5’-0-(3-thiotriphosphate)(GTPS)>GTP>GDP>GMP=ATP>cGMPの順であった。また,GTPS(10-6M)は,受容体からリガンドの解離を引き起こし,また,メラトニン受容体のKdを増加させ,Bmaxを減少させた。各種無機塩類の影響について調べたところ,NgCl2(5mM)は特異的結合を増加させたが,高濃度の各種無機塩類は特異的結合を用量依存的に減少させた。その効果はCaCl2>LiCl>MgCl2>NaCl>choline chloride=KClの順であった。MgCl2(5mM)の存在下ではKdは変化しなかったが,Bmaxは増加した。また,CaCl2(75mM),MgCl2(100mM),NaCl(200mM)の存在下においては,Kdは増加し,Bmaxは減少した。これらの結果から,キンギョ脳内メラトニン受容体はG蛋白質と共役していることが示された。
さらに、マイナーな経路であるが、メラトニンは N-脱アセチル化により 5-methoxytryptamine となり、さらに代
メラトニンは明瞭な日周リズムを示すホルモンなので,受容体の側にも日周リズムが存在するのではないかと考え,キンギョ脳内メラトニン受容体の日周リズムとその調節機構について調べた。明暗条件下では,キンギョ脳内メラトニン受容体のBmaxは明期に高く,暗期に低い,血中メラトニン濃度と負の相関を持った日周リズムを示した。この結果から,メラトニン受容体のBmaxがメラトニンによりdown regulationを受けている可能性が示唆されたので,血中メラトニン濃度の日周リズムを消失させる松果体除去と恒明条件下での飼育を行い,その影響について検討した。その結果,松果体除去,恒明条件下での飼育のいずれによっても脳内メラトニン受容体の日周リズムは消失した。また,松果体除去と恒明条件下での飼育の効果は相加的ではなかった。これらの結果から,脳内メラトニン受容体の日周リズムは血中メラトニン濃度の日周リズムにより駆動されていると結論された。
メラトニンの作用機序を解明するために,キンギョのメラトニン受容体の分布と性状について検討した。メラトニン受容体の体内分布を2-[125I]iodomelatoninをリガンドとしたラジオレセプターアッセイにより検討したところ,脳,網膜に高い特異的結合を,脾臓に低い特異的結合を認めた。脳,網膜における特異的結合は,迅速,安定,可逆的,飽和可能であり,メラトニンに対して高い特異性を示した。親和性(Kd),結合部位数(Bmax)はそれぞれ,脳では27.2±1.4pM,10.99±0.36fmol/mg protein(n=6),網膜では61.9±5.7pM,6.52±0.79fmol/mg protein(n=9)であり,生理的なメラトニン受容体であると判定された。細胞内分布を調べたところ,脳では粗マイクロソーム分画(P3)>粗ミトコンドリア分画(P2)>粗核分画(P1),網膜ではP2>P3>P1の順であった。脳内分布を調べたところ,密度は視蓋-視床>視床下部>終脳>小脳>延髄の順であった。これらの結果から,メラトニンは脳内の様々な神経核や網膜に存在するメラトニン受容体に結合して作用している可能性が示唆された。特に視蓋に高密度にメラトニン受容体が分布することから,視覚情報の統合にメラトニンが重要な役割を果たしていると推察される。
本研究では、目的物質であるメラトニンのバイオセンサを構築し、メラトニン生合成代謝経路を導入すること
1987年秋田大学医学部医学科卒業。医師、博士(医学)。精神保健指定医、日本精神神経学会専門医・指導医、日本睡眠学会専門医。日本睡眠学会、日本生物学的精神医学会、日本時間生物学会の理事、日本学術会議連携会員などを務める。秋田大学医学部精神科学講座准教授、バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、2006年より国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。
魚類における血中メラトニンの代謝経路の一端について明らかにするために,メラトニンの代謝器官であると予測されるキンギョの肝膵臓を用いて外因性メラトニンの代謝をin vitroで調べた。その結果,メラトニンは酵素的に6-hydroxymelatoninに代謝されることが判明した。この代謝系は生体内のメラトニン量とその作用を調節する上で重要な役割を果たしていると推察される。
明期に活性化されたシグナルは交感神経の活性化を介して松果体を刺
キンギョにおけるメラトニンリズムが生物時計による調節を受けているか否かを明らかにするため,恒常条件下でサーカディアンリズム(周期が約24時間の自由継続リズム)を示すかどうか調べた。キンギョにおける血中メラトニン濃度は,恒暗条件下では3日間サーカディアンリズムを示し,明暗条件下の暗期に相当する時刻に高い値を,明期に相当する時刻に低い値を示した。一方,眼球内メラトニン含量は2日間はサーカディアンリズムを示したが,3日目にはリズムは失われた。恒明条件下においては,血中メラトニン濃度は低い値を保ち,変化を示さなかったが,眼球内メラトニン含量は,恒暗条件下に比べて振幅は小さかったものの,サーカディアンリズムを示した。次に松果体の灌流培養を行ったところ,明暗条件下,および逆転した明暗条件下では,メラトニン分泌は暗期に高く,明期に低い日周リズムを示した。恒暗条件下では,周期が23.6ないし24.9時間のサーカディアンリズムを示したが,恒明条件下ではメラトニン分泌は抑制され,リズムは失われた。最後に培養時刻と光条件がキンギョ眼杯標本からのメラトニン分泌量と眼杯におけるメラトニン含量におよぼす影響を検討したところ,明期(1130hr)に眼杯標本を作成し,1200-1500hrの間培養した場合には,メラトニン放出量,メラトニン含量ともに明条件群と暗条件群の間に差は認められなかった。暗期に入る直前(1730hr)に眼杯標本を作成し,1800-2100hrの間培養した場合には,メラトニン放出量,メラトニン含量ともに,暗条件群のほうが明条件群よりも高い値を示した。また,これらの実験の明条件群,暗条件群それぞれにおいて,1800-2100hr培養群の方が,1200-1500hr培養群よりも高い値を示し,培養時刻が眼杯におけるメラトニン産生に影響をおよぼすことが判明した。これらの結果から,キンギョにおけるメラトニンリズムは環境要因のみならず内因性の生物時計による制御も受けていることが明らかになった。
これまでに魚類に対するメラトニン投与は数多く行われてきたが,投与時のメラトニン動態については全く報告がない。そこで,腹腔内注射と経口投与によりメラトニンをキンギョに投与し,血中メラトニン濃度の経時変化を調べた。メラトニンを体重1kgあたり1mg腹腔内注射したところ,投与後直ちに血中メラトニン濃度は上昇し,1時間後に最大値(425.9±129.9ng/ml)を示した後,徐々に減少し,24時間後には投与前とほぼ同じ値に戻った。血中メラトニンの半減期は64.2分であった。また,メラトニン含有飼料を作成し,体重1kgあたり1mg経口投与したところ,投与1時間後に最大値(1607±599pg/ml)を示した後,徐々に減少し,6時間後には投与前とほぼ同じ値に戻った。これらの結果から,メラトニンは腹腔内注射のみならず経口的に投与することも可能であり,血中メラトニン濃度も上昇することが明らかにされた。今後,メラトニンの経口投与による魚類の生理機能制御技術が開発されることが期待される。
メラトニンなどの内分泌ホルモン系、免疫、代謝系などにも約1日を周期とする生体 ..
多くの生物でメラトニンは生体リズム調節に重要な役割を果たしています。鳥類での渡りのタイミングや季節性繁殖(メラトニンには性腺萎縮作用があります)などの季節のリズム、睡眠・覚醒リズムやホルモン分泌リズムなどの概日リズム(サーカディアンリズム)の調整作用があります。
NAT活性は外界の光の影響も受けます。光が瞳孔を通って網膜にあるメラノプシン発現網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive RGC:ipRGC)を刺激すると、そのシグナルが網膜視床下部路を経て視交叉上核に到達して体内時計を活性化し、上述の経路を通じてNAT活性を抑制します。日中は照度が数万〜十数万ルクスもある太陽光のような強い光によってメラトニン分泌量は著しく低下しますが、夜間であっても明るい人工照明が目に入ることによってメラトニン分泌量は低下します。例えば家庭照明の数百〜千ルクス程度の照度の光でもメラトニン分泌が抑制されることがあります(個人差あり)。ipRGCは青色光(ブルーライト)に反応しやすく、白色LEDには青色光成分が多く含まれているため、睡眠や体内時計を乱すのではないかと指摘され、「ブルーライト問題」として有名になりました。このように、メラトニン分泌は体内時計と環境光の両方から調節を受けています。
至るまでその生理機構について多くの研究がなされている。しかし、メラトニンは明確な概日リ
メラトニン(Melatonin, N-acetyl-5-methoxytryptamine)はその大部分が脳内の松果体で産生されるホルモンです。メラトニンは必須アミノ酸のトリプトファンを原料(基質)として合成されます(図)。その過程で、セロトニンをN-アセチルセロトニンに変換するN-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)の活性が体内時計と外界の光の両者の調節を受けます。具体的には、体内時計(視床下部の視交叉上核:しこうさじょうかく)が発振する概日リズムのシグナルは室傍核(しつぼうかく)、上頸神経節を経て松果体に伝達されてNAT活性を「抑制」します。体内時計の活動は昼高夜低であるため、結果的に松果体でのメラトニンの産生量、すなわち血中メラトニン濃度は逆に昼間に低く夜間に高値を示す顕著な日内変動を示します。
細胞質でのエネルギー代謝経路は、主にブドウ糖を分解して体内で使い ..
環境要因がキンギョの血中メラトニン濃度の日周リズムにおよぼす影響について検討するために.季節,水温,および光周期の影響について調べた。まず,自然条件下で季節変化を調べたところ,明期の値は年間を通じて低かったが,暗期の値は季節変化を示し,6月,9月に高く,12月,3月に低い値を示すことが判明した。これらの変化は水温の変化と有意な相関を示したことから,実験的に水温が血中メラトニン濃度の日周リズムにおよぼす影響について,5,15,25℃と水温を変化させて調べた。その結果,光周期にかかわらず,暗期の血中メラトニン濃度は25℃>15℃>5℃の順になった。また,水温にかかわらず,血中メラトニン濃度の高値持続時間は暗期の長さによって規定されていることが判明した。これらの結果から,キンギョの血中メラトニン濃度の日周リズムは環境の光条件と水温の双方に影響を受けた季節変化を示すことが明らかになった。
メラトニンとは、脳の奥深くにある「松果体」という器官から分泌されるホルモンの一種。 ..
キンギョの血中,松果体および眼球内メラトニンの動態について比較検討した。まず,眼球にメラトニンが存在することを高速液体クロマトグラフィーとラジオイムノアッセイの組み合わせにより確認した。次に,明暗条件下における血中メラトニン濃度,松果体および眼球内メラトニン含量を測定したところ,三者とも暗期に高く,明期に低い日周リズムを示すことがわかった。続いて,眼球除去,松果体除去実験を行った結果,血中メラトニン濃度の日周リズムは松果体が作り出していることが確認された。さらに,血中メラトニン濃度と眼球内メラトニン含量の日周リズムにおよぼす日長の影響を検討したところ,キンギョにおいてもメラトニンの高値持続時間は短日条件下の方が長日条件下よりも長いことがわかった。最後に,暗期の開始時から明期を延長して持続性の,また,暗期開始5時間後より急性の光照射(300,1,500lx)を行いその影響について検討した。その結果,持続性光照射により血中メラトニン濃度の日周リズムは失われたが,眼球内メラトニン含量の日周リズムは300lx照射群では振幅が小さくなったものの存続した。一方,急性光照射時には,血中メラトニン濃度は照射開始後直ちに減少し.低い値を維持した。眼球内メラトニン含量は,300lx照射群においては変化を示さなかったが,1,500lx照射群においては照射開始1時間後になってはじめて減少した。急性光照射時の血中メラトニン濃度の経時変化より計算された血中メラトニンの半減期は,300lx照射群においては11.0分,1,500lx照射群においては16.8分であった。以上の結果から,キンギョの松果体と眼球におけるメラトニン合成は互いに独立していること,血中メラトニン濃度の日周リズムは松果体が作り出していること,松果体のメラトニンリズムの方が眼球よりも光感受性が高いことが明らかになった。
[PDF] 項 内 容 名称 メラトニン、松果体ホルモン [英]Melatonin [学名]
メラトニン(N-acetyl-5-methoxytryptamine)は脊椎動物の松果体や眼球で暗期に合成されることから、環境の明暗情報を伝達するホルモンと考えられている。メラトニンは、哺乳類においては繁殖期の決定や概日周期の同調に重要な役割を果たしているが、魚類における知見は乏しい。そこで本研究は、魚類におけるメラトニンの動態、合成・代謝機構、さらにメラトニン受容体による情報伝達系までを総合的に明らかにすることを目的としている。概要は以下の通りである。
メラトニンの代謝と生理的リズム (生体の科学 27巻6号) | 医書.jp
松果体(しょうかたい)から分泌されるホルモン。魚類や両生類に始まり、鳥類、齧歯(げっし)類、ヒトを含めた霊長類に至るまで多くの動物で産生され、繁殖や渡り鳥の飛来などの季節性リズムや、日々の睡眠や体温、ホルモン分泌などの概日リズム(サーカディアンリズム)の調節に関わっている。
メラトニン (JAN); Melatonin (JAN) ; 組成式
魚類における血中メラトニン濃度が日周リズムを示すか否かを明らかにするために,ウグイ,オイカワ,ナマズ,サクラマス,ヒラメ,マダイ,カンパチ,ブリを用いて,明暗条件下における血中メラトニン濃度を測定した。その結果,どの種においても血中メラトニン濃度は暗期に高く,明期に低い日周リズムを示すことが判明した。また,サクラマスとマダイの血中メラトニン濃度におよぼす日長の影響について検討したところ,血中メラトニン濃度の高値持続時間は暗期の長さによって規定されることが明らかになった。これらの結果から,魚類の血中メラトニン濃度は魚種にかかわらず,暗期に高く,明期に低い日周リズムを示すことが明らかになった。
携帯電話の電波による脳内でのメラトニン(睡眠を促すホルモン)の合成への影響は認められないことを確認 ; 松果体でのメラトニン合成
キンギョについてさらに詳しくメラトニンの日周リズムを調べたところ、血中メラトニン濃度、松果体および眼球内メラトニン含量も同様な日周リズムを示すこと、血中濃度の日周リズムは松果体に依存していること、松果体と眼球におけるメラトニン合成は互いに独立しており松果体では眼球よりも低照度の光で抑制されることが判明した。
[PDF] メラトニン 2.6.4 薬物動態試験の概要文 -1
メラトニン(N-acetyl-5-methoxytryptamine)はウシ松果体より単離されたインドール化合物である。脊椎動物の松果体や網膜におけるメラトニンの合成は,暗期に亢進,明期に抑制され,その結果,血中メラトニン濃度も同様の動態を示すことが報告されてきた。メラトニンはこの日周リズムゆえに環境の光周期に関する情報を伝達するホルモンであると考えられており,哺乳類においては,繁殖期の決定やサーカディアンリズムの同調に重要な役割を果たしていることが知られている。しかしながら,魚類におけるメラトニン動態やメラトニンによる情報伝達機構に関する知見は乏しく,基礎的な知見をさらに積み上げていかなければならない状況にある。そこで,本研究においては,魚類におけるメラトニン合成の調節機構からメラトニン受容体による情報伝達系までを一連のプロセスとしてとらえ,総合的に研究を行った。本研究の概要は以下の通りである。
合成経路の解明と老齢になると長期記憶形成に関与するどの遺伝子群が低下するのかを網羅的に解析しました。 【研究成果の概要】
キンギョの血中メラトニン濃度は6月、9月に高く、12月、3月に低い明瞭な季節変化を示した。このため環境条件を変えて調べたところ、血中濃度は水温の高低にかかわらず暗期に高い日周リズムを示したものの、低水温下では暗期の濃度は大きく低下することが判明した。この結果、血中メラトニン濃度は日長と水温の双方に影響を受けるものと結論された。
男性ホルモンや女性ホルモンは、コレステロールから次のような経路で合成されます。 ..
本研究における活性化型のメラトニン受容体の立体構造と、先行研究のX線結晶構造解析による不活性型の立体構造とを組み合わせることで、計算機シミュレーションによるメラトニン受容体の薬剤探索が加速することで、不眠症や、時差ボケなど概日リズムの乱れによる体調不良に対する治療薬の開発へとつながることが期待されます。